『バンド昔話』

2002年4月

20代の時、バンドをやっていました。元々が仕切り屋なので、自分が花形のリードギターをとれる様に、結成時は、主に高校の後輩に声を掛けメンバーを集めました。演奏の場は、カラオケバーから、公民館、ライブハウスへと移っていきました。

遊び・趣味でやっているバンドとはいえ、良い音を作るという目的のためには、メンバー間では真剣な議論が発生します。その点、遊びよりも仕事に近いのかもしれません。

練習の際にメンバー間でもめて、「もう今日は、終わり!」と中断した事は何度もあります。しかし、所詮、仕事ではなく趣味の範疇ですから、嫌になったら仕事よりも辞め易い。チームとして、ひとつのものを作り上げていくためのチームワークを理解できずに、「このメンバー(このバンド)では、やっていけない。」と言って辞めていく、辞めざるを得ないメンバーがいました。

また、バンドのメンバーには、自分の担当する楽器を演奏する専門家としての技量も、あるレベル以上のものを求められます。バンドでは、ひとつのパート(楽器)をひとりが担当するわけですから、間違えるとすぐに分かっちゃいますし、そもそもあるレベルがないと一緒にやっていても楽しくない。逆に、今までの自分達のレベル以上のメンバーが入ってくると、すごい刺激になります。

結成から、何度かのメンバー交代を経験し、以下が僕のバンド人生の最後(と、2002年には思っていた。2007年に現役復帰しました。)のメンバーです。

ドラム:佐久間 常夫
普段はクールに装っているのですが、酔うと弾けてしまいます。ステージでも、声援が掛かると弾けてしまいます。(佐久間、このWebを見たら連絡ください。)

ベース:佐藤 佳行
体重100kg超の体型は安定感バッチリ、演奏も安定感バッチリのベーシストです。ステージで、他のメンバーが舞い上がって演奏が乱れそうになっても、奴だけが常に冷静にメンバーを下支えをしてくれました。(2017年7月、ガンが彼の命を奪ってしまいました。)

ギター:上野 智
黒ぶちのめがねで、髪の毛も七三、性格もおとなしい。当然、ギタリストなのに、ステージでも動きはおとなしい。でも、彼のGibsonのレスポールが奏でるフレーズは、バリバリのハードロック、という変な奴です。

ボーカル、ギター:庄司 光二さん
私の4歳上の方でした。生ギターで弾き語りをやっていたのですが、我々のバンドのボーカルが、仕事の都合で辞めてしまったので、僕らが彼のバックバンドになりました。中島みゆきのレコードのギターを、飲み会(居酒屋)で完璧に再現して遊んでいました。ピアノのセールスの仕事をしていた時、上司といつも意見が異なり、何かともめていたそうです。住宅ローンを抱えた事を知ったその上司から、「これで、お前は俺に逆らえないな。」と言われた次の日に、辞表を叩きつけた人です。残念なことに、1989年12月、庄司さん32歳の時に、病が彼の命を奪ってしまいました。

で、僕は、ギターとキーボードを担当していました。当初はリーダーの地位を活用して、花形のリードギターをやっていたのですが、技量がそれに追いつかず、リードの座を上野に譲り、ギターの楽なパートをちゃらちゃらとやっていましたが、キーボードを担当していたメンバーが辞めて、キーボードもやる羽目に。ピアノなんて習った事はないから、、、、、。

バンドで楽しかった事。それは、自分達が作った曲のアレンジを、バンドで決めていく過程です。曲を作った者が、大体のアレンジを決めて、コード進行だけを書いた楽譜を、練習の時に渡します。メロディーはその場で歌って聞かせる。で、「こんな感じで演奏して」と自分の頭の中にあるイメージを話して、「じゃあ、行くよ。ワン・ツー・スリー、」。

曲を書いた本人以外のメンバーにとっては、全くのぶっつけ本番で演奏が始まります。何度も何度も演奏を繰り返しながら、アイデアを出し合ってアレンジを考え、決めていきます。

その際に、バンドのメンバーが自分のイメージ通りの音を出してくれるのも楽しいですが、むしろ、自分が持っているイメージよりも良いものを出してくれた時、「おっ、それ良いね~!」というのが楽しいです。
このお互いが音楽について育んできた感性と感性のぶつかり合いから生まれる意外性を楽しんでいました。今だと、コンピューターに、各楽器のデータを入力して、アレンジを1人で確かめることができますが、それはとてもつまらない気がします。

このバンドのこのメンバー、最後に、最良のものを与えられたと思っています。チームのメンバーとして、チームワーク良くやっていけるというキャラクターと、それぞれの楽器を演奏する技量。彼らは、両方の面で、私にとって、最高のメンバーでした。

1986.10.26
江古田マーキー

1. 孤独な少年
2. それほど俺は情熱を持った
3. Love Song
4. ビル風の吹く公園
5. レモン
6. 追う夢は遠い昔に
7. Oh My Friend
8. Charry Brown
9. やめちまえロックンロール
10. 私はミュージック ~ 孤独な少年